在職中でも、退職日までに残っている有給休暇は原則として消化できます。退職日が決まっていても、会社が一方的に「有給休暇は使えない」とすることはできません。ただし、有給休暇を取得できるのは在籍している期間中だけで、退職日の翌日以降に繰り越して使うことはできません。
在職中の転職で有給休暇を消化できる理由
年次有給休暇は、一定の条件を満たした労働者に認められる休暇です。労働者が希望する時季に取得するのが原則で、会社が変更できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。
この時季変更権を使っても、退職日を過ぎて別の日に変更することはできません。そのため、退職日までに別の日へ変更できない場合、残りの有給休暇を取得できることがあります。
年次有給休暇のルールは、労働基準法第39条に定められています。
「最終出勤日」と「退職日」は別に考える
有給休暇を消化する場合、最後に出勤する日と、会社に在籍する最後の日が異なることがあります。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 最終出勤日 | 実際に勤務する最後の日 |
| 有給休暇の消化期間 | 在籍したまま、勤務を免除される期間 |
| 退職日 | 会社との雇用関係が終了する日 |
たとえば、3月31日を退職日とし、3月10日まで勤務して、3月11日から3月31日まで有給休暇を取得する形が考えられます。この場合、最終出勤日は3月10日ですが、退職日は3月31日です。
ただし、土日や会社の休日は通常、有給休暇の取得日数には含まれません。残っている有給休暇の日数と、退職日までの所定労働日数を確認する必要があります。
退職前に有給休暇を使うときの条件
退職日までに有給休暇を消化できるかは、主に次の条件で決まります。
- 退職日までの在籍期間が残っているか
- 残っている有給休暇の日数が何日か
- 退職日までに所定労働日が何日あるか
- 会社へ取得日を適切に申請しているか
- 引き継ぎや貸与品の返却などをどう進めるか
有給休暇の残日数が退職日までの所定労働日数を超える場合、すべてを取得できるとは限りません。未消化分を会社が買い取る義務も、原則としてありません。
会社から「有給は取れない」と言われた場合
退職予定者であることだけを理由に、有給休暇の取得を一律に拒否することはできません。ただし、申請方法や時季変更の扱いは会社の就業規則などで定められている場合があるため、まずは社内の手続きに沿って申請します。
有給休暇の取得日を退職日までに変更できない場合、会社が時季変更権を行使することは難しくなります。退職日以降は雇用関係がないため、会社が別の日に変更して取得させることができないからです。
それでも拒否された場合は、次の資料を保存しておくと、後で経緯を説明しやすくなります。
- 有給休暇の残日数が分かる給与明細や勤怠画面
- 退職日が分かる書類やメール
- 有給休暇を申請した記録
- 会社から拒否・変更を伝えられたメールやメッセージ
- 就業規則や社内の休暇申請ルール
会社との話し合いで解決しない場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口などに、具体的な申請記録を示して相談します。個別の事情によって判断が変わるため、退職日、申請日、残日数を整理しておくことが大切です。
転職先への入社日と有給消化期間が重なる場合
有給休暇を消化している期間は、現在の会社に在籍しています。その期間中に転職先で働き始める場合、二重就業や社会保険、雇用契約上の問題が生じる可能性があります。
転職先の入社日を決めるときは、現在の会社の退職日と重ならないかを確認してください。副業や兼業を認めている会社もありますが、就業規則や雇用契約によって制限される場合があります。
通常は、次のどちらかになるよう調整します。
- 現在の会社の退職日の翌日を、転職先の入社日にする
- 両社が認める場合に限り、有給休暇中の就業条件を確認して入社する
特に、健康保険や厚生年金などの手続きは勤務先の状況によって変わるため、両社の人事・労務担当者に事前確認が必要です。
有給休暇を消化するための手順
- 退職日を確定する。退職届や会社との合意書などで、退職日を確認します。
- 有給休暇の残日数を確認する。勤怠システム、給与明細、人事担当者への問い合わせなどで確認します。
- 退職日までの所定労働日を数える。会社の休日を除き、実際に勤務が予定されている日を確認します。
- 有給休暇の取得日を申請する。口頭だけでなく、メールや申請システムなど記録が残る方法を使います。
- 引き継ぎと返却物を整理する。有給休暇に入る前に、業務の進捗、資料、連絡先、パソコンや備品の返却方法を伝えます。
- 最終出勤日と退職日を確認する。有給休暇の開始日、最終出勤日、退職日を会社と共有します。
申請後は、承認された日付と残りの勤務日を勤怠画面やメールで確認します。会社から日程変更を求められた場合は、変更後の日が退職日より前かどうかを確認してください。
有給休暇を買い取ってもらえる?
在職中に有給休暇を取得する代わりに、会社へ買い取りを求めることは原則としてできません。有給休暇は、実際に休むことで心身の回復を図る制度だからです。
退職時に残った有給休暇の買い取りについては、会社が任意で行う場合があります。ただし、会社に買い取り義務があるとは限らず、買い取りの有無や金額は会社の制度によって異なります。
そのため、まずは退職日までに取得できる日数を確認し、買い取りを前提にせず有給休暇の申請を進めるのが基本です。
在職中の転職で有給休暇を消化するときの判断
在職中でも、退職日までに残っている有給休暇は原則として消化できます。判断のポイントは、残日数、退職日までの所定労働日、会社への申請方法、転職先の入社日です。
最初に、退職日と有給休暇の残日数を確認し、退職日までに取得できる日を具体的に計算してください。そのうえで、最終出勤日、引き継ぎ、備品返却、転職先の入社日を調整すると、手続きを進めやすくなります。







